中国は茶の原産国で、五千年の歴史の中で、多様な風土が独特の茶文化を育んできました。日本でおなじみの抹茶や煎茶とは異なり、中国茶は「緑茶・紅茶・ウーロン茶・プーアル茶」を中心に、地域ごとの風味が豊かに展開されます。​緑茶では、杭州の「龍井茶」が代表的です。春先に摘む若芽を煎れば、清香が鼻を刺し、口の中にさっぱりとした甘みが広がります。西湖の水で淹れる「龍井」は、中国文人が愛でる「文人茶」の典型で、毎年春には多くの人が味わいに訪れます。​
紅茶では安徽の「祁門紅茶」が有名で、蜂蜜のような芳醇な香りと柔らかい渋みが特徴です。冬の夜に温かく淹れると、体が優しく温まり、日本の紅茶とは違う深い風味を感じられます。​ウーロン茶の「鉄観音」は福建・広東地域の宝です。「半発酵茶」の特性から、花のような香りとコクのある味わいが融合し、「蓋碗 」という陶器で急須を使わずに淹れる独特なスタイルも人気です。​最も独特なのは雲南の「プーアル茶」で、長年保存するほど風味が増す「後発酵茶」です。昔は馬隊で運ばれる「茶馬古道」の歴史が詰まっており、近年では健康効果も注目され、コレクションとしても人気を得ています。​中国茶の楽しみ方は「淹れ方」にもあります。紫砂の急須でウーロン茶を「回沢 」 したり、透明なグラスで緑茶の葉の動きを眺めたりするのは、視覚も含めた「五感の楽しみ」です。日本の茶道が「和敬清寂」を重視するのに対し、中国茶は「日常の中の小さな豊かさ」を届けてくれるもので、友達との会話や独自の時間を過ごす時に最適です。